「93分20秒」の奇跡|マンC 3-2 QPR、2012年最終節を図解で振り返る【伝説の名勝負】

「93分20秒」の奇跡 マンC 3-2 QPR(背景:エティハド・スタジアム、右:アグエロの銅像) 伝説の名勝負
写真:Cléria De Souza(CC BY 2.0)、Christian David(CC BY-SA 4.0)、いずれもWikimedia Commons。改変して使用

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いらっしゃい。今夜は、プレミアリーグの歴史でいちばん有名な「数字」の話をしよう。

93分20秒。

サッカー好きなら、この数字だけでどの試合かわかるはずだ。2012年5月13日、2011-12シーズンの最終節。マンチェスター・シティ対クイーンズ・パーク・レンジャーズ(QPR)。優勝が決まるまでの最後の5分間に、プレミア20年分のドラマが詰め込まれた試合だ。

グラスを用意してくれ。キックオフから順番に、図解つきで振り返っていく。

試合データ

項目内容
日時2012年5月13日(日)
会場エティハド・スタジアム(マンチェスター)
大会プレミアリーグ 2011-12 第38節(最終節)
スコアマンチェスター・シティ 3-2 QPR
得点シティ:サバレタ(39分)、ジェコ(90+2分)、アグエロ(93分20秒)/QPR:シセ(48分)、マッキー(66分)
退場ジョーイ・バートン(QPR、55分)
監督シティ:ロベルト・マンチーニ/QPR:マーク・ヒューズ

キックオフ前の状況:勝ち点は同じ、得失点差でシティ

最終節を前に、首位シティと2位マンチェスター・ユナイテッドは勝ち点で並んでいた。違いは得失点差で、シティが8点上回っていた。

  • シティ:ホームでQPRに勝てば、ほぼ優勝(ユナイテッドの結果と同じなら得失点差でシティ)
  • ユナイテッド:アウェーでサンダーランドに勝ち、シティがつまずくのを待つしかない
  • QPR:降格の危機。自分たちの結果と、同じく残留を争うボルトンの結果しだい

シティにとっては、1968年以来、44年ぶりのリーグ優勝がかかっていた。しかも相手は降格圏ぎりぎりのQPR。誰もが「シティの楽勝」を予想していた。

図解:試合の流れ

図解:その瞬間、優勝していたのはどっち?

シティ
ユナイテッド
シティ
ユナイテッド
0分20分39分48分

右端の水色=93分20秒〜試合終了

  • 水色=その時点のスコアで終わればシティ優勝、赤=ユナイテッド優勝
  • 試合時間の約3分の2、優勝はユナイテッドのものだった
  • シティが最後に取り返したのは、試合終了のわずか数十秒前
時間エティハド(シティ対QPR)サンダーランド対ユナイテッドこの時点の優勝
キックオフ0-00-0シティ(得失点差)
20分0-0ルーニーのゴールで0-1ユナイテッド
39分サバレタのゴールで1-00-1シティ
48分シセが決めて1-10-1ユナイテッド
55分バートン退場。QPRは10人に0-1ユナイテッド
66分マッキーのヘディングで1-20-1ユナイテッド
90分1-2のまま。追加タイムは5分0-1のまま、まもなく試合終了ユナイテッド
90+2分ジェコのヘディングで2-2(終了)ユナイテッド
93分20秒アグエロが決めて3-2(終了)シティ

ドラマ①:まさかの逆転と、バートンの暴走

前半39分、今季まだ1点も取っていなかった右サイドバックのサバレタが先制。エティハドは「これで決まった」という空気になった。

ところが後半3分、DFレスコットのヘディングのミスを拾ったシセが、強烈なシュートを突き刺して同点。さらに55分、QPRの主将ジョーイ・バートンがテベスとの小競り合いで肘を入れて退場になる。しかもバートンは、ピッチを出ていくまでにアグエロのももに膝を入れ、コンパニにも頭突きを見舞おうとした。

10人になったQPRに、もう反撃の力はない――はずだった。66分、途中出場のトラオレが自陣から一気に駆け上がってクロス。これをマッキーがダイビングヘッドで押し込み、10人のQPRが2-1と逆転した。

皮肉なことに、のちに振り返ると、バートンの暴走で試合が長く止まったことが、5分という長い追加タイムにつながったと言われている。

ドラマ②:届いた5分間

ここからのシティは、文字どおり総攻撃だった。ジェコ、バロテッリを投入し、コーナーキックは試合全体で19本。QPRは自陣に引きこもり、クリアを繰り返した。

追加タイムに入るころ、サンダーランドではユナイテッドが1-0で試合を終えた。選手たちはピッチの上で、マンチェスターからの「終了の知らせ」を待っていた。

90+2分、その19本目のコーナーキック。シルバのボールに、ジェコが頭で合わせて2-2。まだ足りない。あと1点。

そして93分20秒。中盤でボールを受けたアグエロが、ペナルティエリアの手前でバロテッリとワンツー。倒れ込みながら戻されたボールを受け、DFの足をかわして、右足でゴールに叩き込んだ。

英スカイ・スポーツの実況マーティン・タイラーが叫んだ「アグエロォォォ!」は、いまもプレミアの歴史を象徴する声として語り継がれている。サンダーランドのユナイテッドの選手たちは、天国から地獄へ突き落とされた。

ドラマ③:負けたQPRも、実は「勝者」だった

この試合には、もうひとつ結末がある。QPRは負けたが、残留争いのライバルだったボルトンがストークと引き分けたため、QPRは1部残留を決めた。だから試合終了後、負けたはずのQPRの選手やファンもほっとした顔をしていた。

ついでに言えば、QPRの監督マーク・ヒューズはシティの元監督。退場したバートンはシティの下部組織出身で、ライト=フィリップスもシティの元選手だった。古巣の優勝を、元シティの面々が最後まで阻もうとしていたわけだ。

この試合が変えたもの

  • シティにとって44年ぶりのリーグ優勝。ここから、プレミアを何度も制する時代が始まった
  • 最終成績は、シティとユナイテッドがともに勝ち点89。得失点差(シティ+64、ユナイテッド+56)で決着
  • アグエロのゴールは、10周年の2022年に建てられた彼の銅像とともに、エティハドで今も記念されている

2026年の今、この試合を見返すと

ひとつだけ、今だからこそ書いておかなければならないことがある。今年9月、シティはプレミアリーグの独立委員会から、2009年から2018年にかけての財務規則違反を認定された。つまり、この2012年の優勝も、その期間に含まれている。

シティは不正を否定し、不服申し立てを行っている。結論が出るのはまだ先で、タイトルがどうなるのかもわからない。ただ、現地ではこの「93分20秒」をどう語り継いでいくのか、複雑な思いで見ている人が多いのも事実だ。レジェンドたちの声は、いずれこの店でも紹介するつもりだ。

93分20秒の興奮を、もう一度。あの日の空色を一枚どうだい。
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私のひとこと

私はこの試合を、何度見返したかわからない。結果を知っていても、90分を過ぎたあたりから、なぜか手のひらに汗をかく。

サッカーで「最後まで何が起きるかわからない」とはよく言うが、それをここまで見せつけた試合は、ほかにない。ピッチの外の話がどうなろうと、あの5分間にピッチの上で起きたことは、本物だった。私はそう思っている。

今夜の一杯は、93分20秒まで待ってから飲むことにしよう。――FOOTY BAR

参考にした記事

※試合の内容は当時の報道と記録をもとにしています。シティの財務規則違反問題は2026年10月26日時点の状況です。

アイキャッチ写真:Cléria De Souza(CC BY 2.0)、Christian David(CC BY-SA 4.0)、いずれもWikimedia Commons。改変して使用

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