94%のクラブが赤字――イングランドの新しい「サッカー規制機関」が突きつけた報告書の中身|昇格組の日本人3人にも関わる話【2026-27】

94%のクラブが赤字、規制機関の報告書(背景:ベリーFCのギグ・レーン) 海外報道の深掘り
写真:Neil Theasby(CC BY-SA 2.0、Wikimedia Commons)を改変

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いらっしゃい。今夜はちょっと硬い話だけど、プレミアを見るなら知っておいて損はない話をしよう。

10月13日、イングランドに新しくできた「独立サッカー規制機関(IFR)」が、最初の報告書『State of the Game(サッカー界の現状)』の案を出した。日本でも「94%のクラブが赤字」という数字は短く報じられたが、現地ではそこから先の話で大騒ぎになっている。プレミアとその下のリーグの「お金の取り合い」、シティ問題への関わり方、そして昇格組の運命。日本人選手が多く在籍する昇格組にとっても、他人事じゃない話だ。

結論:報告書が突きつけた数字

項目報告書の内容
イングランドのサッカー界の売上年間90億ポンド超
赤字のクラブ上位5リーグ(プレミア〜5部ナショナルリーグ)の94%
オーナーの資金が止まったら4分の1を超えるクラブ(32クラブ)が30日もたない
債務超過EFL(2〜4部)とナショナルリーグのクラブの60%超
選手がタダでも赤字17クラブ(選手以外の運営費だけで売上を超える)
プレミアと2部の差プレミアの平均的なクラブの売上は、2部の平均の8倍超
プレミアの平均赤字2021-22年の約2,000万ポンドから、2025-26年は約4,400万ポンドへ

IFRのデイビッド・コーガン会長は、報告書の冒頭で、イングランドのクラブサッカーは世界一豊かで競争が激しい一方で、財政破綻の瀬戸際にも立っている、という趣旨の言葉を書いている。

そもそも「独立サッカー規制機関」って何?

ざっくり言うと、クラブの経営をチェックする「サッカー専門の監督官庁」だ。2025年に成立した「サッカー統治法」でつくられた、国から独立した機関で、プレミアから5部のナショナルリーグまでのクラブを監督する。

  • クラブを運営するための「ライセンス」を出す
  • オーナーや役員がふさわしい人物かを審査する
  • プレミアと下部リーグのお金の分け方がまとまらないとき、最終的に決める権限(いわゆる「バックストップ」)を持つ

きっかけは、オーナーの放漫経営で歴史あるクラブが消えたり、消えかけたりする事件が続いたことだ。2019年にはベリーFCがリーグから追放され、昨季は名門シェフィールド・ウェンズデイが苦境に陥った。今回の報告書は、そのIFRが法律に基づいて集めたクラブのデータで書いた、初めての「健康診断書」というわけだ。

何がそんなに問題なのか――「崖」と「パラシュート」

報告書がいちばん問題視しているのは、リーグとリーグのあいだにある「崖」だ。プレミアにいれば巨額の放映権料が入るが、2部に落ちると売上が一気に減る。

落ちたクラブには、プレミアから「パラシュート・ペイメント」という救済金が数年間出る。ところが、これがかえって2部の競争をゆがめている、と報告書は指摘する。救済金を持っているクラブに追いつこうと、ほかの2部クラブも無理をして選手にお金をつぎ込み、給料がどんどん上がっていく。昇格という夢のために、身の丈以上の賭けをするクラブが増えるわけだ。

コーガン会長は以前から、降格は多くのクラブにとって「死の宣告に近い」と警告してきた。4部と5部のあいだにも、同じ崖があるという。

IFRの「6つの行動計画」

報告書は、問題点を並べるだけでなく、6つの行動計画も示している。

  • クラブにもっと現金を持たせ、財務リスクを管理させる
  • オーナーが資金を引き上げたときに備えた「緊急時の計画」を作らせる
  • リーグ間のお金の分け方を見直し、「崖」をなだらかにする
  • 膨らみ続ける赤字に歯止めをかける
  • クラブがファンの声をどう経営に取り入れているかを示させる
  • 役員の多様性と、経営の統治(ガバナンス)を改善させる

なお、これはまだ「案」の段階だ。12月まで意見を募集し、最終版は2027年の早い時期に出る予定になっている。

いま現地で動いている「お金の取り合い」

報告書と同時に、現地で注目されているのがプレミアとEFL(2〜4部)の交渉だ。プレミアからEFLへ毎年いくら回すか、という話が、何年もまとまっていない。

立場年間の金額(報道ベース)
プレミアの提案(8月)1億5,000万ポンド
EFL理事会の要求最大2億700万ポンド(5年間)
妥協案として浮上1億8,000万ポンド(プレミア側の投票はまだ)

英スカイ・ニュースによると、話がまとまらなければ、どちらかがIFRに介入を求め、IFRが「バックストップ」の権限で分配の仕組みを決めることになる。ただ、IFR自身が、その場合は決着まで2年ほどかかりうると下部リーグ側に伝えているという。さらに、IFRの運営費の大部分は、プレミアのクラブが負担する方向だと報じられている。

シティ問題とも、実はつながっている

もうひとつ現地で話題になったのが、マンチェスター・シティとの関係だ。シティはプレミアの独立委員会から財務規則違反を認定され、本人たちは否定して不服申し立て中だ。

コーガン会長は報告書の発表後、リネカーらのポッドキャストに出演し、IFRにはオーナーにクラブの売却を迫る権限がある、と説明した。シティの件についても、不服申し立てを含めて手続きが終わってからでなければ動かない、という立場だと伝えられている。つまり、シティの最終的な結論が出たあと、もうひとつの「審査」が待っている可能性があるということだ。

日本人選手にとっての意味

今季プレミアで戦う日本人9人のうち、3人は昨季2部から上がってきたクラブにいる。

選手クラブ昨季
坂元達裕コヴェントリー2部優勝で昇格
前田大然イプスウィッチ2部2位で昇格
守田英正ハル・シティ2部のプレーオフを勝ち抜いて昇格

報告書が描いた「崖」の上に、いま3人が立っているということだ。残留できるかどうかは、選手にとってはキャリアの話だが、クラブにとっては経営そのものの話になる。毎週の勝ち点1が、どれだけ重いものか。この報告書を読むと、昇格組の試合の見え方が少し変わるはずだ。

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私のひとこと

私も店をやっているから、この数字の怖さは少しわかる。売上が伸びても、それ以上にお金が出ていけば、店は続かない。オーナーの財布ひとつでクラブの明日が決まるのは、ファンにとってはたまらない話だ。

プレミアの華やかさは、日本からでも画面越しに伝わってくる。でも、その下には何十ものクラブと、毎週スタジアムに通う人たちの暮らしがある。新しい審判役が、その土台をどう守るのか。シティの件も含めて、この店では引き続き追いかけていくよ。――FOOTY BAR

参考にした記事

※情報は記事作成時点(2026年10月26日)のものです。報告書は案の段階で、最終版は2027年初めに公表予定です。

アイキャッチ写真:Neil Theasby(CC BY-SA 2.0、Wikimedia Commons)を改変

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